Parting tears
 朝、寒さで目が覚めると私は窓の外を見た。そこには木と木の間から、綺麗で大きな湖のような池があるのが見えた。水面に朝日が射し込んでいて、キラキラと綺麗で、私は車のドアを開け、吸い込まれるようにして、木と木の間をくぐった。池の前まで行くと、森に囲まれたその池は本当に美しくて見とれていた。


「結麻。起きてたのか」


 ふいに後ろから和哉に声をかけられ、振り返ると和哉が駆け寄ってきた。


「この池綺麗だね。朝日が射し込んで、森に囲まれて、本当に綺麗」


 目を輝かせた私は視線を感じ、横を見ると、和哉は景色ではなく私を見ている。

 端整な顔にドキドキしながら私は恥ずかしくて俯いた。


「俺は結麻の方がずっと綺麗だと思う。一番好きなのは結麻の目だな」


「は、恥ずかしいでしょ急に。それに目以外は嫌いなの」


 私は恥ずかしさを隠すように、おどけてそう云うと、和哉は真剣に答えた。


「全部好きに決まってるだろ。俺本当に結麻しか見えない」


 綺麗な景色に囲まれ、私達はキスをした。
 その時の私は物語の主人公になった気分に酔いしれていたのかもしれない。

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