Parting tears
 それから月日はあっという間に流れ、夏がきた。

 和哉とは平凡だが、安定した日々を送り、些細な喧嘩はあるものの、側にいるだけで幸せに思えていた。

 そんなある日、和哉は車の販売店でアルバイトをしていたのだが、今日は休みだという日、私は驚かそうと思って、突然和哉の家の前に行き電話をかけた。けれども和哉は携帯に出ず、自宅の電話にも出なかった。

 あれ? 今日休みのはずだし、もう起きてると思うんだけどな。

 私は和哉の自宅の隣りにある公園のベンチに座った。

 一時間近く経っても、電話も来ないし家にもいないみたいだし、不安になる。美久の件があったので、もしかしたら、もしかしたらと、どんどん不安に押し潰されそうになっていったのだ。

 二時間が過ぎようとする頃、遠くから和哉らしき人影と、もう一つ大きい人影が歩いてくるのが見えた。

 左が和哉だろうけど、隣にいるのは誰だろう?
 私の姿を見つけた和哉は手を振りながら走ってきた。


「結麻どうしたの?」


 私は勝手に待っていたのだが、なかなか来なかったことや、電話に出なかったことで腹が立ち、文句を云ってしまった。今考えると幼稚だなと苦笑せざる得ないのだが。


「どうしたのじゃないよ。二時間も待ったんだから。どこ行ってたの電話にも出ないで!」


「ごめん。兄貴と出かけてて」


 数メートルの位置まで歩いてきていた人を見ると、和哉とは全然似ていない身体の大きい太った男の人だった。

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