Parting tears
「もしもし、和哉。今ね、一コ上の幼馴染みから電話きてさ、先輩で社会人チームで、サッカーやってる人いてね、誘われたんだけど一緒にやらない?」


「駄目だよ。結麻は綺麗だから、男がたくさんいる場所に行くだけで心配だよ」


「え~、別に合コンとか行くわけじゃないんだし、和哉も一緒にスポーツすればいいじゃん」


「仮に俺と一緒だとしても、他にたくさん男がいる中に、結麻を連れて行きたくないんだ。出来れば結麻を、他の男の目に触れさせたくないくらいだよ」


 その時私はうんざりした。スポーツは別じゃないかという気持ちと、いちいち和哉に私がすることを決められるのが嫌だった。


「そう。分かった」


 私がそっけなく返事をしたので、和哉は落ち込んでいる様子だった。

 結局私の中ではスポーツをしたい気持ちで一杯になり、ヨシ君に電話を掛け、サッカーのメンバーに入ることにした。もちろんそれは和哉に内緒である。

 それから、和哉とはぎくしゃくしてしまい、もっと会う回数も減った。暗い表情ばかり見せる和哉と一緒にいても、楽しさがなくなっていくのが自分で分かる。だからといって嫌いになったわけではなく、その頃の私は自分のことばかり考えていたのかもしれない。

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