Parting tears
 このまま和哉に殺されるのではないかと思うほど、力強い。苦しそうに顔を歪めた私に、今気付いたかのような素振りで、和哉は急に手を放し頭を抱えた。


「何てことしてしまったんだ俺は……」


 私はもう限界だったのだろう。疲れた声で告げた。


「そんなに疑うなら別れよう。私は別れたい」


 そう云うと、和哉は泣き崩れ、去ろうとする私の足を掴んだ。


「嫌だよ。別れたくないんだよ。頼むから捨てないでくれ」


 そんな和哉の姿など見たくなかった私は、和哉から貰った指輪を外すと、和哉に返した。


「指輪まで外すのかよ……。俺はもう結麻がいなくなったら生きていけない。別れないでくれよ。頼むから」


 和哉は必死で私の足を掴んでいたが、力を込め私はその場を後にした。

 後ろからは人目も気にせず、和哉の泣き声が聞こえてきたが、私は振り返らなかった。これで終わったんだ。たくさんの楽しかった思い出も全てなくなった……。

 その時、何ともいえない気持ちだったのを覚えている。


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