Parting tears
 この頃の私は、囚人になったような気分で、魂の抜けた人形ではないかと自分自身錯覚するほどだった。

 一方、武山は和哉の目を盗み家を訪ねてきたり、電話をかけてきたりした。武山が云うには、私を監視している和哉の後を着けたところ、美久らしき女性と会っているということだった。

 不覚にも、その時の私は精神的にかなり参っていたのだろう、武山の言葉を真実だと思ってしまった。

 それからは膨らんだ悔しさや憎しみが募り、私の中の何かが弾けた。

 和哉にバレないように夜中に出かけ、友達と遊ぶようになり、投げやりになっていた。もちろん遊ぶ友達は美久ではなく、別の女友達だ。

 
 そんなある日の帰り道、私の家がある道路に出ると、和哉が家の前で待ち伏せしているのが遠目に見えた。

 家にいないことがバレたんだ。どうしようかと迷っているうちに、和哉はこっちに視線を向けた。私に気付いた和哉は鬼のような形相で走ってきたので、恐ろしくなり私は逃げたのだが、ヒールだったため和哉に追いつかれた。


「逃げてんじゃね~よ! どこ行ってたんだよ! また浮気してたんだろ!」


 和哉は別人のように私に怒声を浴びせ、首を絞めてきた。

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