Parting tears
 美久は、和哉と私を別れさせるため、裏で小細工していたのだ。自分の仲が良い先輩に相談した結果、丁度、武山が私に好意を持っていたことも知り、粘着タイプだということも知っていたようだった。そして武山を裏で動かしていたのである。詳しい計画までは分からないが、邪魔された結果、和哉と私が別れたのは事実である。

 その事実を、私は他の女友達と、幼馴染みのヨシ君から聞いて分かったことだった。

 ただ、一つ分からないのは、和哉はどうして携帯や自宅の電話に出ないことが度々あったのだろうか。美久と裏で会っていたからだと、納得していたけれども、明らかに、何かを隠している素振りだったのに、それだけは結局分からなかった。

 
 それから私は、昔のように彼氏を次々と変え、気持ちが荒んでいた。そんなふうだから、誰と付き合っても長く続くことはなく、和哉と一緒にいる時のような気持ちには決してなれなかった。


 あれから一度、和哉を見かけたことがあった。それは私が引越した時、ふとカーテンを開け、窓を開けると和哉が帰って行く後姿だった。その時は真相を知らないので、何しにきたの? 何で引越し先を知っているの? と内心冷たく思っていたが、きっと和哉は誰かに引越し先の住所を訊いて私に会いにきたが、どうしても声をかけることが出来なかったのだと思う。

 そして、もしあの時真相を知っていたなら、私は和哉を呼び止めていたかもしれない。けれども、そこで呼び止め、仮にやり直したとしても、和哉と私の間に入った大きな亀裂は、決して元に戻すことは出来なかったんだと思う。

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