Parting tears
 そして龍揮と結婚して今日で五年目の結婚記念日。


「ほら、着いたぞ。何珍しく無口になってんだよ。早く降りろ」


 龍揮が笑いながら云うので、私は車から降りると、一緒に自宅へ入った。


「あっ、俺車に忘れ物したから、取ってくるよ」


 そう云って慌しく、龍揮は車に戻った。

 しかしすぐに戻って来ると、妙に、にやにやしている。


「何ニヤニヤしてんの。気持ち悪い」


「気持ち悪いはないだろ。ほらこれ」


 不器用に私に手渡したのは、綺麗な花束だった。

 
「嘘? いつ用意したの? 忘れているかと思った。ありがとう」


「結麻が洋服買うのに夢中になってる間、俺待ってただろ? その時、花屋で買ってトランクに隠しておいたんだよ。結婚記念日、忘れるわけないだろ」


 私は人前で絶対泣かないと決め、涙を堪える癖がついていたのに、龍揮の前で大粒の涙を零した。


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