午前0時のシンデレラ
「泉さん…その人は?」
震える唇から出た言葉は、あたしの醜い嫉妬の言葉だった。
「ん?ああ、彼女は街のコーヒーショップの定員さんだよ」
「花蓮です!よろしくね」
…カレン、さん。
コーヒーショップ関係で、泉さんと知り合ったんだ。
「泉くんとはこの前知り合って、今日お邪魔させていただいたの」
ニコニコと話す花蓮さんは、悪気なんか何もないのに。
「すごい美味しいコーヒーのお店よね!咲良ちゃんも、好きなんでしょ?」
なのに、あたしの心を簡単に乱す。
「…好きです」
醜い心を悟られないように、あたしは花蓮さんじゃなくて、泉さんにそう言った。
泉さんは少し照れたように、眼鏡の奥で瞳を細めた。
「何だか照れるね。…ありがとう、咲良さん」
泉さんはきっと、あたしがコーヒーが好きだと言ったみたいに聞こえたはず。
あたしは、泉さんが好きだと伝えたかったけど。
…でも、伝えられない。