午前0時のシンデレラ

「~ふざけないでよ!あたしが好きなのはあんたじゃないわ!」


「じゃあ何で俺に抱いてとか…」


「あたしが好きなのは、あたしが好きなのはっ…!」


脳裏に、忘れようとしていた記憶が蘇る。


あたしじゃない、他の女の人を呼ぶ声。


それでも…


「…あたしが好きなのは、泉さんだもん…!」


その想いを口に出したことで、緩んでいた涙腺が壊れた。


次々と溢れてくる涙を止める術を、あたしは持っていなかった。


「泉さん…、泉さんだもん…!」


涙に揺れる視界の奥で、柳が動いたのが分かった。


次の瞬間、あたしは温かい腕に包まれていた。


「…やなっ…」


「あーはい。よしよし」


柳はポンポンと、子供をあやすようにあたしの頭を撫でた。


「…バカにしないでよ」


「してねぇよ」


一定に刻まれるリズムは、余計にあたしの涙を誘う。


あたしは涙が落ち着くまで、柳の不器用な優しさに包まれていた…


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