午前0時のシンデレラ

…あたしはもう、独りじゃないから。


「よぉ、フラれてきたか?」


「うっさい、バカ柳」


お店の前に立っていた柳に、あたしはべーっと舌を突き出す。


すると柳は、少し意外そうな顔をした。


「へぇ、驚かないんだ?俺がいること」


「あんたがどこに現れたって、もう驚いたりしないわよ」


…何となく、予感してたし。


あたしは柳の真正面まで歩くと、その瞳を見据えた。


「ありがとう」


あたしらしくない言葉を口にすれば、柳は面白そうに瞳を細める。


「どういたしまして」


認めたくないけど、あたしは柳には敵わないみたい。


だってあたしがシンデレラだったら、魔法使いには敵わないから。


…なんて、柳のメルヘン思考が移ったかな。





「―――――帰ろう、咲良」





ひとつ魔法が解けたら、きっと。


また違う魔法がかかるんだ。



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