午前0時のシンデレラ

「…いいんです。あたしは、気持ちを伝えたかっただけですから」


花蓮さんのことは、今はまだ…訊けない。


だけど。


「泉さん」


あたしはぎゅっと手のひらを握りしめると、泉さんを真っ直ぐに捉えた。


「あたしに、また…コーヒーを淹れてくれますか?」


今すぐには、無理だけど。


それでも、いつかまた…笑い合える日が来たら、あたしはそれで充分。


「…もちろんだよ」


その笑顔が見れるなら、あたしは幸せです。


「えへへ、ありがとうございます」


「いや、俺のほうこそありがとう。…また、いつでも遊びにおいで」


「はいっ!」


あたしは笑顔でそう答えると、泉さんに別れを告げ、お店を出た。


パタンと閉まった扉に背中を預け、深呼吸をする。


「…うん、大丈夫」


昨日みたいな深い悲しみは、もう感じない。


少しだけ、チクチクと胸が痛むけど大丈夫。


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