午前0時のシンデレラ
「ちょうど下で、ピエロが風船配ってたんだよ。そしたら、手を離したのか…上に昇ってくんのが見えてさ」
「ふぅん」
「反応薄っ!」
下を覗くと、確かに慌てた様子のピエロが見えた。
「…きれい、だった」
視線をそこに向けたまま、あたしはぽつりと呟く。
柳の笑い声が聞こえて、そっと顔を上げた。
「―――だろ?」
少し傾きかけていた太陽が、柳の顔を照らした。
その無邪気な笑顔に、ぐらりと心が揺れる。
…また、だ。
この感覚。
「な、によ。柳が自慢することじゃないわ」
「確かにそうか」
はは、と柳が笑う。
その笑い声が、心をくすぐる。
あたしたちが乗るゴンドラは、いつの間にか頂上を越し、地上へ向かっていた。
地上へ辿り着くまでの間、あたしと柳はただ黙って、オレンジ色に染まっていく空を眺めていた。
…あたしの心臓のドキドキは、鳴り止むことはなかった。