午前0時のシンデレラ

必死に意識を外に向けようとしたけど、そうしようとすればするほど、室内に集中してしまう。


ちらりと柳を見遣ると、あたしとは反対方向の景色を、頬杖をついて眺めていた。


その姿を見て、何故か心がちくんと痛んだ。


「―――あ」


不意に呟かれた言葉に、あたしはびくっと肩を震わせた。


柳は横をあたしに視線を移すと、ニヤッと笑った。


「外、見てみ」


「…え?」


柳が指差す方を覗き込むと、視界が鮮やかに染まった。


「………え、」


赤、青、黄色、ピンク、オレンジ…色とりどりの風船が、あたしの目の前をゆっくりと横切っていった。


その姿を追うように視線を上げると、風船は空に向かって消えていく。


風船が見えなくなってから、あたしは柳を見た。


「…何、今の」


「何って、風船だけど。見たことないのか?」


「ばっ、あるわよ!」


ムキになってそう言うと、柳は笑った。


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