午前0時のシンデレラ

「2週間ちょっと前、柳が突然家に来た。すげえ悲しそうに笑って、俺に頼みがあるって言うんだ」


「………」


「俺は何も言わずに部屋に招き入れると、柳の話を聞いた」


あたしは光の瞳を真っ直ぐ見据えたまま、ごくりと喉を鳴らした。


「…柳は、何て言ってたの?」


「咲良を傷つけた。自分はもう、咲良の世話係じゃいられない。だから、自分を俺の世話係にしてくれ―――ってな」


…バカじゃないのかと思った。


柳がバカだなんて、もう知ってるけど。それ以上にバカだ。


あたしを傷つけたから、あたしの世話係じゃいられない?


そんなの、勝手に決めないでよ。


「俺は言ったんだよ。咲良はどうすんだ、って」


あたしは唇を噛みしめると、次の言葉を待った。


「…自分がいなくても、咲良はもう大丈夫だ。そう言ってた」


―――涙が、出た。


大丈夫だなんて、そんなわけない。


今こんなにも、柳を想ってるのに。


「だから俺は、バカじゃねぇのって言っといたけどな」


声を出さずに泣くあたしを見て、光は苦笑した。


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