午前0時のシンデレラ
23時を回った頃。
―――――コンコン
小さく扉を叩く音に、あたしはビクッと肩を震わせた。
「光お坊っちゃま、失礼いたします」
次いで聞こえた柳の声に、心臓が跳ねる。
たった2週間。
それなのに、こんなにも柳を望んでいたなんて。
躊躇なく開かれた扉から、かつての世話係が現れた。
その綺麗な瞳が、瞬時に見開かれる。
「―――咲良…?」
あたしの名前を呼んでくれた彼に、あたしは微笑みかけた。
「…こんばんは、柳」
柳は口をつぐむと、部屋の扉を背後で閉めた。
柳が部屋を出て行かなかったことに、小さく安堵する。
「何で…」
「何で?こっちのセリフよ、バカ柳」
会って早々バカ呼ばわりもどうかと思ったけど、もう止まらない。
たった2週間。
それでもあたしには、長すぎたから。