午前0時のシンデレラ
「アイツ、まじで鬼だぜ。さっきやっと終わった」
疲れきったように肩を下ろすと、光はあたしをじっと見た。
「…1時間後に来るぜ」
その言葉に、心臓が大きく脈を打つ。
あたしは何も言えず、小さく頷くだけで精一杯だった。
そんなあたしを見て、光は苦笑した。
「咲良がそんな緊張するとこ、初めて見たな」
「~う、うるさいわねっ」
「ま、頑張れよ」
光はあたしの頭をポンと叩くと、扉に向かった。
その背中に、あたしは呼び掛ける。
「―――光!」
振り返った光は、いつものように含み笑いをしていた。
そんな光に、あたしも笑った。
「…ありがとね!」
光がいなかったら、あたしは柳に会う希望すら失っていた。
光がいたから、あたしと柳を繋ぐ糸は、完全に断ち切られていなかった。
光はフッと笑うと、扉の向こうへと姿を消した。
―――――あと、1時間。