午前0時のシンデレラ
「…うん、当たり。あたし1人が好きだから」
今までに散々、愛想笑いをしてきた。
屋敷でたまに開かれる堅苦しいパーティーとか、お偉いさんとの挨拶とか。
けど、今の愛想笑いが、今までで一番上手くいったと思った。
…ただ、柳に本心を知られたくなくて。
強がって隠してる、弱い心を見透かされたくなくて。
「当たりか。俺の勝ちだな」
「うん。とゆうことで回れ右」
「いやいや、しねぇし」
…よかった、バレてない。
車内に響く柳の笑い声で、今のあたしは安心できた。
あたしが街を嫌がるのは、1人が好きだからじゃない。
―――逆に、1人が怖いから。
街に出ても、あたしが知る人は誰もいないの。
1人になるのが怖くて、嫌で。
…だから、安心できる場所での1人を選んだ。
屋敷の周りなら、いつも1人ってわけじゃないから。