午前0時のシンデレラ
「…やめろっつったり、やれっつったり。忙しいな」
「うるさい。どうなのよ」
腰に手をあてて、睨むように柳を見る。
「はは、態度でかっ」
柳は笑うと、あたしの前で片膝をつき、ゆっくりとあたしの右手を自分の口元へ…え?
「―――かしこまりました、お嬢様?」
柔らかい感触が触れたところが、仄かな熱を帯びる。
上目遣いで微笑む柳を見て、確信犯だとすぐにわかる。
…こいつ、あたしの反応面白がって見てる。
いい?
あんたの思い通りにはならないんだから。
「…結構。よろしくね、柳」
わざとらしいくらいの微笑みを、柳に向けた。
柳は一瞬目を丸くすると、すぐに苦笑した。
「負けず嫌いなお嬢様だな」
「うるさい、ハウス」
「…犬かよ」
周りの雑音が、少しだけ静かになった気がする。
あたしと柳の関係は、まだ始まったばかり。