午前0時のシンデレラ

「…やめろっつったり、やれっつったり。忙しいな」


「うるさい。どうなのよ」


腰に手をあてて、睨むように柳を見る。


「はは、態度でかっ」


柳は笑うと、あたしの前で片膝をつき、ゆっくりとあたしの右手を自分の口元へ…え?



「―――かしこまりました、お嬢様?」



柔らかい感触が触れたところが、仄かな熱を帯びる。


上目遣いで微笑む柳を見て、確信犯だとすぐにわかる。



…こいつ、あたしの反応面白がって見てる。

いい?

あんたの思い通りにはならないんだから。


「…結構。よろしくね、柳」


わざとらしいくらいの微笑みを、柳に向けた。


柳は一瞬目を丸くすると、すぐに苦笑した。


「負けず嫌いなお嬢様だな」


「うるさい、ハウス」


「…犬かよ」


周りの雑音が、少しだけ静かになった気がする。





あたしと柳の関係は、まだ始まったばかり。





< 45 / 200 >

この作品をシェア

pagetop