午前0時のシンデレラ

さっきまでの悲しそうな表情はどこにいったのか、柳は面白そうにあたしを眺めている。


~何その顔、何その余裕っ!


「このっ…、弱腰男っ!!」


「はい!?」


つん、とそっぽを向いたあたしは、人で賑わっている中央通りを見据える。


柳が逃げてるなら、あたしは逃げない。


…だから、追いかけてみなさいよ。


「いい!?」


勢いよく振り返ると、柳が顔をしかめた。


「いいって、何が」


「あたしはもう、泣かないわ」


拳を握って、柳の瞳をしっかりと見る。


まずはこの瞳に勝たなきゃ。


「…へぇ。強がり?」


あからさまにバカにしたように笑う柳に、あたしは顔がひきつる。


落ち着け、あたし。

柳のペースにはまっちゃダメよ!


「絶対、泣かない。だからあんたは大人しく、あたしを世話しなさい」


柳の瞳が、あたしを捉える。


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