午前0時のシンデレラ

「じゃあ、参加ってことでいいよな?」


「パパは何て言ってるのよ」


「さっき楽しそうに準備してたけど」


…もう。パパのバカ!


パパは池田の家系がいかにずる賢いかってことに、全然気づいてないんだから。


あたしたちと関わりを未だに持ってるのだって、結局は財産目当てなのに。


「勝手にすればいいわ」


あたしはため息をつくと、柳にそう吐き捨てた。


「言っとくけど、舞踏会なんて堅苦しいだけよ!」


「はい」


「始終愛想笑いしてなきゃなんないし、ものすっごい疲れるんだから!」


「はい」


自分に有利だと分かると、この男は…。


きっとあたしが何を言っても、もう引かない。


「…何かあったら、あんたがあたしを護りなさい」


柳をじっと見据えると、視線が絡む。


瞳の奥で、柳が悪戯に微笑んだ。


「かしこまりました、お嬢様」


…これが、波乱の幕開けになるなんて。



―――この時のあたしは、まだ知らなかった。



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