午前0時のシンデレラ
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招待状が届いてから、舞踏会が開かれるまでの1ヶ月。
あたしは出来る限りのことをした。
礼儀作法を柳に教え込んだり(たいていのことはもう知ってたけど)。
池田の屋敷内の地図を覚えさせたり(すぐ覚えたけど)。
…努力する間もなく、何でも軽くこなされたからムカついたんだけど。
とにかく、細心の注意を払うように、あたしは柳に言い聞かせた。
「いい?怪しいやつがいたら気をつけるのよ」
「はい」
「あたしのそばを離れるんじゃないわよ。パパがいるし、あたしには手を出せないと思うから」
「…お嬢様、足元にお気をつけ下さい」
柳に手を引かれ、あたしは車に乗り込んだ。
あたしが後部座席に座ると、柳は運転席の扉を開ける。
「聞いてるの?って言うか、何であんたが運転するの」
「あれ、不満ですか?」
柳は扉をバタンと閉めると、エンジンをかける。