午前0時のシンデレラ
…あたしは知ってた。
池田に、本当の友達がいなかったこと。
「独りが嫌で嫌で、そんなあんたにはあたししかいなかった。だからあんたは、あたしを求めた」
「…っ、違う!」
「でも、あたしはあんたの求めていたものとは、また違った。だからあたしを捨てたのよ」
「違う!!」
池田は力の限りそう叫ぶと、息を切らせた。
オーケストラの演奏が、池田の声をかき消していた。
「俺は…俺はっ…」
「いい加減、認めたらどうです?」
その声にあたしが驚くと、柳は池田に一歩近付いた。
「ちょっと柳…」
「うるせえ!お前に何が分かる!?」
池田が柳を睨むと、柳は肩を竦めた。
「さっぱり分かりません。…けど、あなたの表情が、嘘かどうかぐらい分かります」
「………!」
池田は目を見張ると、悔しそうに歯軋りした。
「くそっ…」
柳はまた一歩、池田に近付いていく。