大好きな君にエールを
病院の『ゆったりルーム』の椅子に座ってる俺と永松。周りは受付のアナウンスが聞こえるくらい。
優勝したはずなのに、嬉しくないなんて初めてだ。ましてはあの憧れの甲子園が目の前にあるのに。
「落ち着いたか?荒嶋」
永松が床と睨み合いをしながら聞いてきた。
「…全然だよ。頭ん中にはショックばかり」
「そっか」
無口で案外不器用な永松は、俺にどうやって声をかければいいのかわからないらしい。
永松の方が落ち着いていないと思うけど。俺は、そんな永松を横目に口を開いた。
「なぁ、永松はさ…もし、シゲさんが目を覚まさなかったらどうする?」
永松の動きがぴたりと止まった。そして、2回ほど瞬きをして言った。
「俺は、シゲさんが目を覚まさないとか思わないから」