君に恋した。
「あ…ず!」
あずは、ついさっき駆けつけたのか、息を切らしていた。
「あれ?どうしてここに?」
「いや、田島って子から連絡が来て…。」
愛は、あずのケータイ番号を調べ、電話をかけていた。
“美菜、倒れたの。一応あなたにも連絡しておくわ。”
それだけの電話だった。
そして、それを聞いたあずが、病院に駆けつけたのである。
「大丈夫なの?」
「え…?あぁ、体?大丈夫だよ?」
私はさっきのことがショックだった事がばれないように、精一杯の笑顔で返した。

ギュッ。あれ?体が浮いて…。
って、だっこされてる!?

「キャ…!ちょっと、降ろして!」
「やだ。

本当は大丈夫じゃないくせに。」
「そんなこと…。」
「本当に?」

私は「本当だよ」と答えることが出来なかった。
あずは、私を抱いて人気のないところへ連れて来た。

「ベンチ、座ってて。飲み物買って来る。」
「うん…。」
私は言われたとおりベンチに座った。背もたれにもたれると、青空が見えた。
「はい。紅茶でよかった?」
「うん…。あず、コーヒー飲めるようになったんだ。昔、飲めなかったのにね。」
「まあ、成長したんだよ…。」
「そう…。」
あずは、私に飲み物を渡すと、丁度一人分開けて隣に座った。
2人の間に流れる沈黙―――。
人気がないから余計に静かだ。
(えっと…、どうすればいいんだろう…?)
頭がぐるぐる回って、よく考えられない。

―――その時、沈黙を破るようにあずが口を開いた。
「大丈夫?」
「体調でしょ?大丈夫だよ。」
「違うよ。本当は俺と会う前、何かあったんだろう?」
「何も、無いよ。」
「嘘だろ。」
「…別に。」
ばれたくない。気づかないで…!
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