プレーン
吾が輩は何者か
阿佐ヶ谷のアパートから逃げ出したものの、行くあてなんか無かった。


こころがどこに居るかなんて、分からなかった。
だけど会いたい。


無暗に動くよりは賢明だ。

八王子まで行って大学を探そうかとも考えたが、

中央線の改札からどっと出て来た人波を見てしまうと、
先が案じられた。


これでは馬鹿も聡いもあったもんじゃない。

かと言って岬さんに助けを求めるのは、
もっと間抜けで馬鹿だと思う。


曇り空を歩いていたら急に心細くなって、

いっそ実家へ帰ろうかなんてフと思ったりしたが、その足も無い。

月の半ばだと言うのに財布の中身は干上がっているし、

あすはバイトで、
帰って寝たら朝には講義。


現実を蹴っていられる身分ではなかった。
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