― Summer Drop ―
「お前さ、千夏のこと………。」

少年の恐いくらいに真剣な瞳が、睨むように謙太を見据えた。

「……え?」




「千夏のこと……どう思っとるんや?」

すぐ近くの梢で、ニイニイゼミが鳴いている。

その声がいっそう大きくなったように感じた。





「…………だよ。」

謙太の言葉は

鳴き続けるセミに掻き消された。


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