花粉症の男性が出会った植物
数週間後。
会社を無断欠勤し続けた男性のマンションの前に、会社の上司と警察、そして管理人が訪れていた。
みな、心配そうな顔をしている。
彼の部屋からは濃く甘い匂いが漂っていたが、全員その香りに顔をしかめていた。
何せこの匂い、まるで熟れ過ぎた果実のような匂いをしているからだ。
管理人が扉を開き、全員が部屋に入った。
そしてリビングの扉を開けたところで、
「うっうわああああ!」
異様な光景を眼にした。
リビングの部屋の中は、植物の枝が広がり、黒き大輪の花がいたる所に咲き誇っていた。
そしてその植物の根には、彼の体があった。
全身の血を植物に吸われ、茶色に干乾びた体が、枝に絡まれ、根を下ろされていた。
甘い香りは、この花から発せられていた。
彼の手には、説明書が握られていた。
そこの5番目の注意書きには、
【⑤お客様の与える血の量に対し、植物は成長いたします。しかし与え過ぎにはくれぐれもご注意ください。植物が暴走なさっても、お客様の責任となりますので…】
路上で植物を売っている男は、風に乗って漂ってきた甘い匂いに、笑みを浮かべた。
「ああ、あのお客さん。よっぽど気に入ったんだねぇ。こんなに美しく咲かせてくれるなんて、植物冥利につくな。お前達」
男の声に、植物達がかすかに動いた。
そして植物を見て、足を止めた女子高校生が1人―。
「わあ、可愛い!」
しゃがみ込み、植物を見る女子高校生に、男は笑顔を向けた。
「いらっしゃい、お客さん。美しい花は好きかい?」
会社を無断欠勤し続けた男性のマンションの前に、会社の上司と警察、そして管理人が訪れていた。
みな、心配そうな顔をしている。
彼の部屋からは濃く甘い匂いが漂っていたが、全員その香りに顔をしかめていた。
何せこの匂い、まるで熟れ過ぎた果実のような匂いをしているからだ。
管理人が扉を開き、全員が部屋に入った。
そしてリビングの扉を開けたところで、
「うっうわああああ!」
異様な光景を眼にした。
リビングの部屋の中は、植物の枝が広がり、黒き大輪の花がいたる所に咲き誇っていた。
そしてその植物の根には、彼の体があった。
全身の血を植物に吸われ、茶色に干乾びた体が、枝に絡まれ、根を下ろされていた。
甘い香りは、この花から発せられていた。
彼の手には、説明書が握られていた。
そこの5番目の注意書きには、
【⑤お客様の与える血の量に対し、植物は成長いたします。しかし与え過ぎにはくれぐれもご注意ください。植物が暴走なさっても、お客様の責任となりますので…】
路上で植物を売っている男は、風に乗って漂ってきた甘い匂いに、笑みを浮かべた。
「ああ、あのお客さん。よっぽど気に入ったんだねぇ。こんなに美しく咲かせてくれるなんて、植物冥利につくな。お前達」
男の声に、植物達がかすかに動いた。
そして植物を見て、足を止めた女子高校生が1人―。
「わあ、可愛い!」
しゃがみ込み、植物を見る女子高校生に、男は笑顔を向けた。
「いらっしゃい、お客さん。美しい花は好きかい?」
