無口なDarling
「・・・ん」
チュンチュンと小鳥の声が聞こえそうな位穏やかな朝。
・・・いや?
・・・カチカチ
なんだ?
眠りを妨げるような、機械音。
カチカチ。カチカチカチ・・・
「だぁ!!うるせぇ!!」
穏やかな眠りを妨げた奴に怒鳴り散らすと、目の前には一瞬ビク!とする女。
・・・もちろん、そこに居たのはさっきまで俺の腕の中にいた俺の女。
「えへ?ごめんなさい・・・」
隠す暇も無かったのか、観念したのかおずおずと一台の携帯を俺に差し出した。
・・・俺の携帯じゃねーかよ。なんだよ?見てたのか?
「ちッ違うよ??疑ってるわけじゃなくて!うん。そう。蚊かもね!?こんな季節だけど・・・蚊だ!蚊!」
うーん、それとも火傷かな?なんてブツブツと何かを言う。
蚊?火傷?マジで意味がわかんねー。
「何?俺の携帯になんか入ってたか?」
良くわかんねーけど、疑われているのだけは嫌だ。
スっともう一度澄子に自分の携帯を差し出す。
「見ろよ。俺は怪しまれる事も、悪いことも、ましてお前を裏切るようなことは一切してない」
なんで急に昨日の今日で、俺を疑い始めたのかは分からねーけど、携帯を見て不安がなくなるなら納得の行くまで見ればいい。
「猛・・・ごめ・・・」
ごめんね、と泣きながら抱きついてくる。
別にしょうがねーよ。
人間なんだし、好き同士なんだし、急に不安になったり急に疑いたくなるときもあるだろ?
大事なのはそれをどう受け止めてやるかだ。