無口なDarling

「・・・ん」


チュンチュンと小鳥の声が聞こえそうな位穏やかな朝。



・・・いや?


・・・カチカチ


なんだ?


眠りを妨げるような、機械音。


カチカチ。カチカチカチ・・・


「だぁ!!うるせぇ!!」


穏やかな眠りを妨げた奴に怒鳴り散らすと、目の前には一瞬ビク!とする女。


・・・もちろん、そこに居たのはさっきまで俺の腕の中にいた俺の女。



「えへ?ごめんなさい・・・」


隠す暇も無かったのか、観念したのかおずおずと一台の携帯を俺に差し出した。


・・・俺の携帯じゃねーかよ。なんだよ?見てたのか?


「ちッ違うよ??疑ってるわけじゃなくて!うん。そう。蚊かもね!?こんな季節だけど・・・蚊だ!蚊!」


うーん、それとも火傷かな?なんてブツブツと何かを言う。


蚊?火傷?マジで意味がわかんねー。


「何?俺の携帯になんか入ってたか?」


良くわかんねーけど、疑われているのだけは嫌だ。


スっともう一度澄子に自分の携帯を差し出す。



「見ろよ。俺は怪しまれる事も、悪いことも、ましてお前を裏切るようなことは一切してない」


なんで急に昨日の今日で、俺を疑い始めたのかは分からねーけど、携帯を見て不安がなくなるなら納得の行くまで見ればいい。


「猛・・・ごめ・・・」


ごめんね、と泣きながら抱きついてくる。


別にしょうがねーよ。


人間なんだし、好き同士なんだし、急に不安になったり急に疑いたくなるときもあるだろ?


大事なのはそれをどう受け止めてやるかだ。

< 206 / 286 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop