宝石よりも
夜の訪問

約束どおり、俺は真夜中に女の子の部屋を訪れた。



窓を勝手に開けて入り込んできた俺に気づくと、嬉しそうにかけよってきた。



「ありがとう、泥棒さん。約束守ってくれて」



俺の手をぐいぐい引いて、リビングの方に招き入れた。



リビングのテーブルの上には二人分のティーカップが用意してあった。



「どうぞ座って」



女の子に勧められ、向き合って座った。


途端、心底嬉しそうな目で見つめられて、不覚にも心臓が跳ねてしまった。



「私は月山美夜っていうの。泥棒さんのお名前は?」



彼女は俺の方に身を乗り出してきた。


にこにこと聞かれて、俺は少し困ってしまった。



「それ、言わないとだめかな?」



< 9 / 103 >

この作品をシェア

pagetop