宝石よりも
もう夜も遅い時間。
来るはずもない人を待っていても仕方ないから、窓からそっと離れた。
月を名残惜しく眺めて、ゆっくりと窓に背を向けたとき。
カタン
窓のほうから物音がし、はっとして振り返った。
月明かりに照らされた窓を見て、息を飲んだ。
私の目から溢れたのは、一筋の涙。
「……カイ」
カイは前と同じように窓からするりと中に入ってきた。
月の光を体にまとって。
……幻?
私があんまりカイに会いたいって思ってるから
幻が見えるのかな?
柔らかく笑うは紛れもなくカイで
私は一歩も動くことができなかった。