嘘つき③【-束縛-】
当たり前のように二人部屋に戻るこの光景は側から見れば普通なんだろうか。
あたしなんかまだ慣れない。


分からな過ぎるから。彼という人が。



眼鏡の奥の冷たく見える程理知的な瞳はいつもあたしを見透かす様に真っ黒。






「今日は無口だな」


部長は、またそのフレーズを口にする。


「…そんな気分なんです」


見つめていたい。そんな気分なのは本当。


部長は珍しそうにあたしを眺めると、


「そうか。なら、尚更、話をしよう」


と悪戯に微笑んだ。


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