嘘つき③【-束縛-】
「ええ、例えばの話ですわよ」
琴音さんは全く動じた様子も見せずまた柔らかく笑った。育ちの良さを感じさせる笑み。それは身に付いたもので、溜め息が出る位嫌みがない。
年齢なんて関係ない。
今、この時点であたしはこの人よりコドモだ。
棘が刺さる。
「女性の存在中心に男性を見るつもりはありませんわ。それこそ、面倒くさいでしょう」
細く鋭い棘が
「そんな事どうだっていいですもの」
彼女は静かに言った。それでいて本心で、何もない空虚な、声。
あたしは深い棘が刺さったみたいに、体が冷えた。