嘘つき③【-束縛-】

「冴木?」


ああ、部長だ。


低すぎない優しい声。

眼鏡の奥に覗く理知的な瞳。


狂いのない端正な顔立ちを僅かに驚かせて、彼はあたしの名を呼ぶ。


多分



何も考えず、やっと会えた、それだけで彼に抱きついた。


「…どうした?」


バタンと扉が閉まって、


引き返せない、


引き返さない。



覚悟を決める。



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