天然彼女の愛し方(完全版)
『何で…あれれ?』
ようやく目が覚めたらしく
今の自分の状況にプチパニックになっている姿があまり見えなくても分かる
「間違って酒飲んで今までずっと眠りこけてたんだよ」
『ぇえっ!…お、重いでしょ!降ろしていいよ!』
俺の背中でばたばたと暴れる春華
「ちょっ!おい!…バランス崩れる!」
『えっ!キャァー!』
ドンッ
『…あれ?』
「嘘、こんくらいで倒れる訳ないだろ」
上手い具合に春華の体を揺らして
背中に押し付けただけなんだから
『…あは、そうですよね…』
春華は気恥ずかしくなったのか
俺の首に回す腕の力を少し強くし
俺の首筋に顔をうずめた
「…っ」
だから
こいつは無意識でこんなことをするのだからタチが悪い
朱に染まった頬を見られないように
俺は前だけを見て無言で歩いていた
…しばらくして
全然春華が話しかけてこないことに気付いた
「おい、春華?」
『…ふゅー』
寝たな
「はぁー…」
吐き出した息が白いことで
もう冬が近いことを知らせてくれる
君と過ごす
初めての冬がやってくる