天然彼女の愛し方(完全版)
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「おかーさんっ!今日は早く起こしてって言ったのに…」
『いつもより30分早いじゃない
ちゃんと早く起こしたわよ』
トーストにジャムを塗って簡単な朝食を済ませると
まだコーヒーを飲んでいるお父さんを横目に洗面所へと急いだ
『あんなに急いで何があるんだ?』
『彼氏と一緒に学校にでも行くんじゃない?』
母が放った言葉は少し父を動揺させたようで
ティースプーンが音を立てて床に落ちた
『そうだな、俺があいつの年の頃にはお前と付き合ってたから
おかしな年齢ではないな』
『そうよ、いつでも嫁に渡す準備をしとか無いと
あなたも私の親と同じ気持ちを感じる準備をね』
いつまでも仲の良い夫婦が微笑みあっていると
ぱたぱたとせわしない足音がリビングへと戻ってきた
もう制服へと着替えている
「お弁当は?」
『はい、こっち
…いってらっしゃい、麗(ウララ)』
「いってきます」
たぶん、あの父親に似て少しプライドが高い娘は
彼氏の前ではこんな風にパタパタと慌てながら走る姿を見せないのだろうと思うと
少しおかしかった
『はよー、…なんで姉ちゃん今日早いの?』
『夏紀(ナツキ)おはよう
お前も彼女のひとりぐらいいないのか?』
『んー、まぁ探し中
高校入ったばっかなんだからじっくり探さないと』
俺もコーヒー頂戴
なんていう姿は一丁前でなんだか憎らしい
母似の可愛らしい顔つきだが、背が高く
本人の性格も低空飛行なため全然可愛く見えない
『澪(ミオ)にもコーヒー頂戴
ミルクと砂糖入れて』
ようやく起きてきた今年小6の末っ子は
上二人を見てきたためかとても世渡り上手
個性がそれぞれだから
子供は宝物
そうしてそれぞれ子供達が出かけていくと
今日は遅く行ってもよい父親が動き出す
『じゃ、春華
行ってくる』
『いってらっしゃい、廉』
子供のいないところでは未だに名前で呼び合うこの夫婦も
仲睦まじいのはいつの時代も変わらない
二人は軽く唇を合わせると
それぞれの朝を始めだした