嘘つき④【-理由-】
『琴ちゃん、今夜のパーティはどう?』
あたしはウインクして彼の一人娘の手を無邪気に取る。
『パーティー…、私、あの様な場は苦手ですわ』
いつから身についたのか年齢よりも大人びた表情。長い睫毛が黒目がちの大きな瞳を覆う。まだ13歳で社交界デビューなんて、と私は思うけど、彼にとっては何でもない。
置物の様にそばに置いておきたいんだわ。
『ただ、その場にいるだけな事程、苦痛なものありませんもの』
そして、彼女もまたその理由を知っている。
長い睫毛に落ちた瞳は深く沈む。
元々、その瞳がどれだけの闇を含んでいるかになんてこの時は気付かなかった。
あたしは、人形の様な容姿をした彼女に快活に声をかける。
『うんとお洒落して、視線をかっさらいましょ!!琴ちゃんがいるだけで雰囲気は一変に変わるんだから!!』
彼女は顔を上げて、少しだけ微笑んだ。