嘘つき④【-理由-】
少し、酔ったわね。嫌になる。
『逃げる』なんて選択した私を笑うかしら。『君らしくない』と一蹴されても良かったけど、それ程強くない自分が嫌で仕方ないから。
感情の向け方を知らない不器用で、優しい人。
あの男が、気付くのか気付かないのか見てみたかった。
確固とした地位が欲しいんじゃなくて、
誰かの真っ白な感情が向けられたいということに。
さあ、もうすぐ彼が来る。
赤い口紅を塗り直しして、いつものような笑顔を作って、
カラン、と開いたドアを振り返った。
「愁哉、遅いわよ」
Fin
