【完】アニキ、ときどきキス
始めの頃が嘘みたいだというと、山田先生もその一人。

始めは私のことが好きだったのに、今では美帆さん一筋。


なんとも複雑な心境だけど、これはこれで良かったと思っている。

だってすごく幸せそうだし。


「美帆さんからメールですか?」


職員室の椅子に座り、それをクルクル回しながら、携帯をニヤニヤと眺めている山田先生の側に寄って、話しかける。


「え!はいっ」


山田先生の目尻がトロンと下がる。


「美帆さん、もう少しで帰ってくるんですよね?」


「ですね。
もう楽しみで仕方ないんですよ」


「それは良かったですね」


幸せそうな山田先生につられて、私も一緒になって目尻を下げる。


「でも、帰ってきてからは司法大学院に行くので、まだしばらくは離ればなれなままです」


「そうですか。
でも今度は同じ日本ですし。ね」


「ですね」


私はそう言って山田先生を励ました。

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