君の詩を聴かせて



 俺以外にもまだ人いるし、何とかなるでしょ。

 スクールバックを肩にかけて歩き出す。


「ばいばーい」


 適当に手を振って教室を出た。

 円香はもう帰ったのかなー。

 受験も終わって、勉強しなくって良くなったのに。

 そもそも推薦なのに勉強するほうが可笑しいのか?


「あ、兄ちゃん!」


 聞き慣れた声に、ふと足を止めて振り返った。

 サッカーのユニフォームを来て走りよってくる少年。

 黒髪の短髪が風に揺れていて、幼い顔を少しだけ隠していた。


―蕪木 悠史(カブラギ ユウシ)

 一応俺の弟。

 熱意とかやる気とか、俺が忘れてきたものを抱えて生まれてきて

 俺とは正反対。

 だからあんまり関わりたくないんだけど、何か妙になつかれてるんだよね。


「祥次くんってまだ教室?」

「うん、数学と格闘してる」


 悠史はサッカー部で祥次の後輩だ。

 だからよくなついてるんだけど、刷り込みは消えないらしい。


「そっかー、教室行っても平気かなぁ?」



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