君の詩を聴かせて



 そんなこと、あり得ない。

 なんとなく想い溢れ…の前奏を弾く。

 胸の奥で燻る感情を、見て見ぬフリした。

 俺が円香のこと好きだなんて、あり得ない。

 円香はただの幼馴染みなんだから。


「それに切ない歌詞の中にも愛を感じるってゆーか…」

「黙って」


 強くピックを押し付けた。

 少し荒く弾く。

 何も考えたくなかった。

 余計なことなんて、何も。

 感情を押し込めて声を出す。

 いつも通りの声のはずなのに

 どこか、悲しい気がした。

 薄く目を開けて白を探す。

 無駄なことだってわかってる。

 ただ、行き場のないこの感情を

 どうすればいいのかわからないこの想いを

 もて余している自分にイラついていた。





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