君の詩を聴かせて



 ……人は変わっていく。

 気付かない内に、少しずつ。

 違う“とき”から目を逸らしたくて、足を速めた。







―――――







 5月29日、日曜日。

 今日は円香の誕生日だ。

 プレゼントを持って円香の家に向かう。

 …円香、いるかな。

 腕の中のプレゼントを見る。

 中身はパスケースと鏡。

 この間見たら、お姉さんのやつ使ってたから。

 鏡は女の子だしいると思って。

 洋風の家を見上げる。

 家まで来るの、久しぶりな気がする。

 中学上がってからあんまり遊ばなくなったしなぁ。

―ピンポーン


『…はい、どちら様ですか?』

「あ…大和です」

『え、大和くん!?今開けるねー』


 少しして円香のお母さんが出てきた。

 円香によく似た、優しい人。


「久しぶりだねぇ、大きくなって…」

「お久しぶりです…」


 なんとなく背筋を伸ばした。

 普段も伸ばしてるはずなんだけど…。



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