ヒレン
「一生の問題だから。ゆっくり考えろ。ま、でもひとまず今は目の前の実習に取り組むことだな、お互いに」



「うん」




ベランダに出て空を見上げた。


曇り空から微かに顔を出す上弦の月と見つけた一番星



ねぇ、智。今でも私のこと見てくれている?




一番星みーつけた。



よく智と二人競い合った。



どっちが先に見つけられるか



もう勝敗は覚えていない



生まれる前からずっと一緒だった


大切な大切な片割れ



今私がこの場所にいる理由



「大丈夫」



熱が出るとそう言って冷たい手をおでこに当ててくれた


両親にはうつるって怒られたけど



「僕でよかった」


弱くなった力、細くなった指で私の手を握りながら最期、智がくれた言葉



12歳の冬



冬の大三角が綺麗に見える日だった



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