ヒレン

心に一滴の不安を抱えたまま、国試へ向かっていった


今までになく机に噛り付く日々



真と和真と共に図書館の閉館時間まで粘った智子が建物の外へ出ると、空はすっかり闇に染まっていた




「暗くなってきたな。長崎大丈夫か?送らなくて」




「平気。それより和くん、お願いね」



なれないというより苦手な分野を集中的にこなしたせいか和真はぐったりとしていた



「ああ。気をつけろよ」




「ごめん。智子」



掲示板の前で別れようとしたとき、クラブボックスの方から見慣れた影が近づいてきた




「先輩たち?」




「ヒデ?今帰りか?」



「はい。和真先輩どうしたんですか?」



真の肩に凭れかかっている和真を指差しながら尋ねた



「ああ。気にするな。脳みそ使いすぎただけだから。…ちょうど良かった、長崎送っていってくれないか?方向同じだっただろ?本当は和真が送るべきなんだろけど、この状態だからな」




「…わかりました。良いですよ」

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