ヒレン

恋煩い

和真との別れから智子はさらに研修に打ち込むようになった。


2年間のスーパーローテーションを経て選んだのは外科。



そして秀明も無事に国家試験をパスし、大学病院で研修医としてのスタートを切ることになった



「合格おめでとう」



「ありがとうございます」



あれから2年。


和くんを思い出すことが苦ではなくなった




…というのは建前でふとした瞬間、周りの人間の仕草に和真(かれ)を感じ、胸を締め付けられる。




「……また泣いたんですか?」



「…ちょっとね。メイクでカバーしたつもりなんだけど」



あの時、屋上で秀明の前で泣いて以来、智子は誤魔化すのをやめた。


誤魔化せなくなったという方が正しいのかもしれない



「泣いたら楽になりましたか?」



秀明は手に持っていた缶コーヒーのプルタブを切った



屋上に吹き付ける風が二人の髪を靡かせる。

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