ヒレン
「…」


智子はポケットから煙草を取り出すと火をつけた。


涙と一緒に流れていくのは寂しさ。


泣くのは弱い自分



いくら泣いても流れていかない胸に刺さった棘



涙と比例するように増えていくのは煙草の本数(かず)




「……秀くんは何を隠しているの?」



知恵の輪みたいな私の心の鍵を解いてしまう。


その心(て)には何を抱えているの?



きっとあなたの心の鍵は私の手の中にある。


でもそれはパンドラの箱



ねぇ?開けてしまえば、希望が詰まっているのかな?



奈落の花なのかな



煙草の火を灰皿に押し消した瞬間、今までの誰よりも高い位置から体温(ねつ)が落ちてくる




呼吸(いき)の仕方さえ忘れていたほど久しぶりの接吻(キス)だった。



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