ヒレン
「…で…なんで」


もっと強くなりたい。

一人でも生きていけるように、立っていられるように

ほんの一瞬、一瞬だけ伸ばした手を、握ってくれるの?

誰もいなければ諦められるのに。

一人が辛くなくなるのに…


誰かに縋りたいと想うことは弱さですか?


「好きです」


「…っ」


今この手を取ったらきっと、もう一人じゃ歩けない


あの時止まった時計の針がまた動き出す。


過去に囚われるこんな私が誰かを求めてもいいのですか…?


ふわりと香った煙草。


抱き締められていると気がつくのに時間は掛からなかった。


「…め」


体温(ぬくもり)から逃れようと足掻いてみるが男女の力の差は歴然である。



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