ヒレン
「珍しいな。お前が人が入ってくるところで吸うなんて」


缶コーヒーを片手に手術着に白衣を引っ掛けた真が入ってきた


「お疲れ様。わかってて入ってきたんでしょ?」


真の手にあった2本のうちの1本を取ると、隣に腰を下ろした


息をつくと、プルタブを開けた缶を智子の目の前に掲げてみせる。

その仕草に智子もプルタブを空けた缶をぶつけた


「一先ずは成功おめでとう。難しい症例だったんでしょ」


真はローテーションの後、麻酔科医としてのスタートを切っていた


「まあな。それよりチコ。チコの中で和真はどんな存在だ?」


「…忘れられない人」

「智は?」


「…同じ」


真の聞きたいことはわかってる。


「北、ヒデは?」


「……大切な人」


「じゃ、何で止めなかった。ヒデの結婚」


「誰かを忘れていない、それどころか、時折比べてる。こんな私に止める権利なんてない」



彼を求める権利は私になんてない



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