ヒレン
「両親から連絡がきたんです。結婚して欲しいって」


それは前触れもなく突然告げられた。


「…そう。相手は?銀行の娘(こ)?それとも同じ開業医の?」


彼と体を重ねるようになってから知った事実、それは秀明が、地元では大きい総合病院の一人息子だということ。


医者の世界に親が医者というのは珍しくも無い。


「製薬会社だそうです。病院の経営が思わしくないみたいで」


政略結婚…。

実家が貿易会社を経営する自分にとっても決して遠いものではない。


幸い両親がそういったことを気にする人ではなかったが。


「…両親が守ってきたものを守るため、結婚すると言ったらどうしますか?」


しないで!

なんて言えない。

まだ、和くんを忘れられない私がそんなこと言っちゃいけない。

彼に泣いて縋り付けるほど若くは無い。


「愛のない結婚だなんて言うんじゃないわよ?」


「…向こうにも男がいるみたいです。利害が一致したならお互い様でしょう」


触れた唇を私はまた求めてしまった。



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