ヒレン

Schwache ~弱さ~

「昔話でもするか」


「・・・・・・え?」


テーブル越しにぶつかり合う視線。



「その代わり、そっちは和真との昔話しろよ」


「・・・はい」


そう言うと真は微かに口角を上げた。


秀明が自室から持ってきたコーヒーを飲みながら二人はそれぞれの昔話を口にした。


智子が同級生の横暴に耐えかねて、男子のリーダーを泣かしたこと、その騒動に真が巻き添えを食らったこと、和真の音楽部での失敗、男子校でのエピソードなどを二人は互いに口に出す。



時計の針がちょうど直線になる頃、眠っていた智子が目を覚ました。


「気分は?」


そう言って真は体温計を渡した。


「・・・頭痛はしなくなった」


体温計を受け取るとすぐさま脇に挟んだ。しばらくすると電子音が鳴る。


「38度か。薬が効いているからだろうけど。何か食べれそうなものは?」


「・・・・レモンジュース」


「ジュースは飲み物だろう」


そう言いながらも秀明からグラスに注いだレモンジュースを受け取ると、起き上がっていた智子に渡した。


「ありがとう。・・・・りんご食べたいかな」


「・・・だろうと思って買っといた。摩り下ろしてやるからそれまで横になってろ」


そう言ってキッチンに向かった真であったが、どうも包丁捌きが覚束無い。


「代わります」


部屋を出た秀明が真に声をかけた。


「・・悪いな。頼む」


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