ヒレン

遅い夕食

「今日は帰っていいわよ。ありがとう、明日もよろしくね」



「わかった。お疲れ様」



時計が10時半を指した頃、舞子は旅館を後にした。先に優太が帰っているはずだ。両親は今夜は帰ってこない。


「ただ今」



「お帰り」



玄関を開けると微かに食欲をそそる匂いが香った。



「先食べててくれてよかったのに」



「一人で食べても仕方ないだろ」



その答えに思わず笑みがこぼれた。こんな小さな優しさが嬉しい


「急いで着替えてくるね」



2階の自室まで駆け上がり、着物を脱ぐ。着物を片付けると、また階段を駆け下りた。

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